すべて、永遠じゃない

霧の淵

三宅朱莉 水川あさみ 監督・脚本:村瀬大智

Introduction
第72回サン・セバスチャン国際映画祭の新人監督部門に最年少で選出、「奥深い日本の暮らしを描いている」と賛され、アジア最大規模の映画祭、以降も第28回釜山国際映画祭の A Window on Asian  Cinema部門招待作品としてアジアプレミアを遂げた本作。メガホンをとったのは、若手クリエイターの台頭、今、最も映画館で観てほしい監督 ・村瀬大智。本作での長編商業デビュー作品となる。
物語の舞台となるった奈良県吉野にある川上村に村瀬監督自ら単独で長期滞在し、現地の人々との交流から生まれたこの物語は、実際にあるこの村で実際にある老舗旅館を舞台にどこか懐かしく、親しみのある目線で「家族の物語」を描くいている。
本作の主演を務めるのは、オーディションで抜擢された奈良県出身の新人俳優三宅朱莉。老舗旅館を営む家に生まれた主人公・イヒカ役を演じ、子供から大人への揺れ動く佇まいを瑞々しく表現、映画の中で存在感を放っている。またイヒカの母・咲を演じるのは、『喜劇 愛妻物語』、『滑走路』(20)でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞ほか多くの映画賞を受賞する実力派俳優水川あさみ。別居中の旦那の実家の旅館を切り盛りするという複雑な状況の中、娘の成長を見守る母親を真っすぐに演じる。
 そして、イヒカの父・良治役を演じるのは、『母性』(22)、『ケイコ 目を澄ませて』(22)などの話題作に多数出演する映画界に欠かせない俳優三浦誠己。更に、イヒカの祖父・シゲ役を演じるのは、TBSドラマ「水戸黄門」シリーズ等人気ドラマシリーズをはじめ、数々のVシネマの名作に出演する名優堀田眞三が出演。

どこか懐かしく、一瞬、一瞬がとても心地よい、今、この時代だからこそ残したい大切な時間を丁寧に映し出した傑作が誕生した。
Story
奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落。
かつては商店や旅館が軒を並べ、
登山客などで賑わったこの集落で、代々旅館を営む家に生まれた12歳のイヒカ。
数年前から父は別居をしているが、
母の咲は、父との結婚を機に嫁いだこの旅館を義理の父・シゲと切り盛りしている。
そんなある日、シゲが姿を消してしまう。

旅館存続の危機が迫る中、イヒカの家族に変化の時がやってくる――。
コメント
イヒカ役:三宅朱莉
この『霧の淵』という作品の出演が決まった時、喜び以上に驚きや不安がありました。
それまで映画に出演した経験もなく、不安な気持ちもありました。
ですが、いざ現場入りしてみると、監督さんやスタッフさん、
共演者の方々が私のことをイヒカとして接してくれて、イヒカとして生活する事で、
とても自然体で撮影に臨むことができました。
奈良の川上村で過ごす、日常を切り取った様な暖かい作品です。ぜひ劇場でご覧下さい。
イヒカの母・咲役:水川あさみ
奈良の川上村で住むようにして撮影した日々を思い出します。
山で椎茸や山菜をとったり、薪で火を焚べたり、沸騰するお湯の湯気すら愛おしい時間でした。
わたし演じる咲のモデルとなった朝日館の女将から、
色んな話を伺う事で役が生きてきて映画に反映される。
東京で暮らすわたしには全てが贅沢で素晴らしい経験でした。
それぞれ登場人物の想いや葛藤はもちろんですが、
雰囲気や匂い、そんなものまで感じてもらえたら嬉しいです。
イヒカの父・良治役:三浦誠己
大好きな出演作が、またひとつ増えました。
撮影現場で何度も映画が「育つ」瞬間を体験でき、
また演技の中で導かれるように動く自分に鳥肌が立ちました。
この映画は村瀬監督のもと、素晴らしいチームの力と奈良県川上村の方々の協力によって
「育てられた」映画だと思っています。
素晴らしい脚本が、撮影現場の様々なアンサンブルによって超越していく瞬間がありました。
是非、映画館で「風の音」「森の匂い」を感じて下さい。
イヒカの祖父・シゲ役:堀田眞三
令和4年3月23日、古来より神秘の力が宿り、
悠久の歴史を誇る 奈良県の奥吉野川上村、朝日館さんにてクランクインしました。
峰にはまだ雪があちこちにあり、
以来 山全体 吉野桜 満開の絶景 に至る 大自然の元3週間撮影しました。
安全成功祈願祭、さざれ石、てんから釣り、見事な苔・石垣 、源流館、
ジビエのロールキャベツ、鹿の焼き肉弁当春増さんのお話、
撮影では百々カメラマンの笑顔に助けられ、尽きぬ想い出ばかりです。
そして何よりの喜びは皆々さんに凄ーく良くして頂け心豊かな毎日を過ごさせていただいた事です。
『霧の淵』に関わる皆様、本当にありがとうございました。
村瀬大智 監督
『霧の淵』は、川上村で川上村の皆さんと作った大事な映画です。
2020年から川上村で長い時間を過ごさせてもらい、
撮影も沢山の村民の方々にご協力やご出演いただきました。
そして『霧の淵』は、過疎化が進む村で老舗旅館を営む家族の映画です。
この映画の舞台となった奈良県の川上村は、
2018年には人口減少率では全国でワーストになってしまった村です。
僕はこの村出身でもないし、縁もゆかりもありませんでした。言ってしまえば他所者です。
他所者には分からないこともあれば、他所者だからこそ感じるものもあります。
村内の人が住まなくなってしまった集落、ダムの底へと続く旧道。
かつての人々の生活の痕跡。
何かを永遠に保存していたい気持ちと衰退の過程の瞬間にある無常を
美しいと思ってしまう矛盾した気持ちを抱きながら、
この映画は出来上がりました。
過去、現在、未来と、フレームの外へ伸びてゆく川上村での時間を体感していただけたら嬉しいです。